柳父章『文化』

文化という言葉は日常的に使われている。日本文化、文化の違い、多様な文化、食文化。しかし文化とは何なのか?そのことをじっくりと考える機会は多くない。この概念が舶来品であることもあまり意識されない。

この本は「文化」なる言葉がいかにして日本に定着していったのかをコンパクトにまとめていて、普段、透明で意識することの少ない「文化」概念を考える手がかりを与えてくれる。

著者によれば今日的な意味での文化概念は1915年、桑木厳翼がドイツ語のKulturを翻訳して以降、新カント派哲学を媒介に広まり定着していったという。この言葉はあらゆる人間の営みをゆるやかに括り捉える視点を可能にした。伝統文化として、近代よりも前の雑多な営みを括るという発想自体、近代的なものだということになろう。

「日本文化」の「型」を想定している点など、それこそ文化を本質的に捉えているのではないか、と思える箇所もあったが、総じて面白い本だった。

 

文化 (一語の辞典)